アニメ沼

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沼の底からアニメの感想をお届けします。

映画大好きポンポさん感想~逆張りオタクの敗北~

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初めましての人は初めまして、明太子と申します。

 

劇場アニメ『映画大好きポンポさん』を観てきました。

 

 


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この作品は公開当初からアニオタTLを賑わせていて、感想はどれも大絶賛。

あまりにも否定的な意見が少ないものだから、「ホントにそこまで面白いのか・・・?」と逆張りオタクが発動してしまっていたのですが・・・

 

 

結論から言いましょう。

間違いなく面白いと断言できます。逆張りオタク敗北です。

 

 

 

というわけでここから感想に移ります。

公開からしばらく経っているので、備忘録も兼ねて内容に触れたものを書こうかなと。

※まだ見てないという方はブラウザバックして今すぐ映画館へ行きましょう。

 

 

 

 

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この作品の魅力はまず、タイトルにもある"映画大好き"という部分だろう。

作中のキャラや映画製作の過程を通じて、クリエイター側がどれ程の拘り情熱を持って作っているかがこれでもかという程伝わってくるのだ。

主人公・ジーンはその最たるもので、次々と繰り出される映画の知識や「地球上で一番幸せ」と編集作業に向かう姿は愛に溢れており、魅力的だった。

そんなジーンの並々ならぬ映画への情熱が周囲にも伝播し、アイデアが連鎖して魅力的な映像が生まれるシーンとか素敵でお気に入り。

この辺りの魅力は既存の作品で言えば『映像研には手を出すな!』が近いかな。

 

そしてこの作品の(おそらく)テーマでもある、"切る(=編集)"ということがもう一つの魅力。この"切る"には大きく2つ意味があると感じた。

 

 

①時間的な意味での"切る"

ポンポさんは幼い頃の思い出から、長い映画は苦痛で90分の短い映画は心のオアシスだと言っていたが、作中でも語られる時間への拘りをこの作品は体現していた。

 

序盤は特にスムーズな場面転換が印象的で、描写を省略しながらも途切れることがない。普通の作品なら単純に画面ごと切り替わるところを、少しでも映像的に楽しませようという工夫が見て取れたのがグッド。

 

また始めにジーンが15秒CMを作る為に映像をカットしまくって凝縮するというのを見せる構成もお見事で、これがあることでその後も制作側がどういう意図でこの映像選択をしたのかという視点が出来てより一層味わい深くなっていた。

当たり前っちゃ当たり前なんだけど、意味のないシーンなんて一つもないんだよな。

ありとあらゆる表現に制作側の意図が込められている映像、その情報量の多さに改めて感嘆した。

 

物語の締め台詞もバッチリ決まってて、作中での映画と合わせてポンポさんという作品自体も90分で完結させることで、色々なものを切り捨てて作ったという説得力が増していたと思う。

 

 

②人生的な意味での"切る"

ジーンは全てを切り捨てて人生を映画に捧げてきた典型的な陰キャオタク。

「幸福は創造の敵」だと言うポンポさんは、死んだ目をしているジーンこそ創造の世界を広げることが出来ると目をつける。

 

あらゆることを切り捨てて来た先に辿り着いた映画で、それでもなお苦悩するジーン。

自分が撮った映像をカットするシーンが辛くて…ジーンにとって映画は全てで、どのシーンも最高に好きで、それでもまだ削らなくてはいけない。

編集して映画を作り上げるという行為は、選択の連続で構築される人生を表現しているのだろう。

 

作中のキャラに自分を重ね、「切り捨ててきた過去が足りない」と気付き、あらゆるものを削ぎ落して完成した作品は、ジーンの人生そのもの。

そんな作品が賞を取りポンポさんに認められる…この作品はジーンのような、映画(創作物)の中に自分を見出し夢を見ることで救われてきた人間に夢を与える応援歌なのだろう

 

作中で「作品の中で自分を見つけたからその作品を好きになった」というニュアンスのフレーズがあったかと思うが、自分にとってのジーンは間違いなくその対象の一人。

 

 

そしてもう一人はアランという一般人が当てはまる。

何事もある程度そつなくこなしていたが、特にやりたいことも見つからず成り行きに身を任せていた人生に焦燥感を覚えていた彼もまた自分に感じられた。

夢を叶えたジーンの姿がアランに火を点けたように、創作物の中で感情移入したキャラが何かを成し遂げる瞬間というのは視聴者にとってもパワーが貰えるもので、だからこそアランの行動には自分を重ねて見てしまうというか。

この作品はアランのような何者にもなれない人間にとっても応援歌になっているんですよね。

 

クリエイター側ではないアランという、ある種異物とも取れる人物を物語に組み込むことで、受け手の幅が広がっているように思う。

 

 

敢えて気になった点を挙げるとすれば、アランはもう少し掘り下げがあっても良かったかも?特にジーンの力になると覚悟を決める辺りの感情の動き。

アランは今まで映画には無縁の男でジーンとも関わりはほぼ無かった訳だから、全てを賭けるならそれなりの理由が欲しい。ベタだけどジーンが作った映像を見て感銘を受けるみたいな?

この作品の主役はジーン&ポンポのペアに加えてアランだと思ったので、もっと感情移入させる作りに特化するのもアリだったかも。

ナタリーとか出会い方が印象的だったから後からも色々あると思いきや、最後まで見るとそこまで役割なかったからもう少し削ってアランの尺に充てても良いような気はした。

 

本当に敢えて言うならそこぐらい。

非常に完成度の高い作品だったと思う。

 

 

 

感想は以上となります。

ここまで読んで下さりありがとうございました。

評判通りに楽しめたので、これからは素直に生きようと思った今日この頃。

 

先日公開された『サイダーのように言葉が湧き上がる』も好評ですが、ジャンル的にも自分好みな青春ものっぽいので絶対見に行きます。人間は学習する生き物。

 

それでは今日はこの辺で。